【人事学望見】第1236回 転勤命令権と労働者の不利益 業務上必要性と甘受可能か量る
2020.04.02
【労働新聞】
使用者は労働契約に基づいて、業務上の必要性がある場合には、労働者の働く場所を決定することができる、というのが転勤命令権といわれている。ただし、無制約に発令することは許されず、業務上の必要性は、余人をもって替え難いほど高度ではないといえる。
相当性薄い 余人替え難き
代表的な転勤命令に関する判例といわれているのが、東亜ペイント事件(最二小判昭61・7・14)である。
事件のあらまし
Aは、大阪に本店、東京に支店、大阪ほか2カ所に工場、全国13カ所に営業所を持つY社の神戸営業所で主任待遇の身分で勤務していた。広島営業所へ転勤するよう命じられたがこれを拒否、さらに名古屋営業所への転勤をも拒否したため、業務命令違反として懲戒解雇された。当時、Aは母親(71歳)、妻(28歳)および長女(2歳)と共に大阪・堺市にある母親名義の家屋に居住(母親を扶養)していた。妻は無認可保育所の運営委員として勤務していたが保母の資格はなく、取得のために勉強中だった。なお、AとY社の間には勤務地を大阪に限定する旨の合意はない。…
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令和2年4月13日第3252号12面 掲載