【人事学望見】第1240回 解雇予告異聞 手当不払いも期間経過が救いに
2020.04.30
【労働新聞】
2008年秋のリーマン・ショックの関連と記憶しているが、六本木ヒルズという誰もが羨むオフィス環境のビルから段ボール箱を抱えた一団が粛々と去っていた。テレビでは全員が解雇されたと驚きの声で解説していたが、ことほど左様に米国企業はドライに処理するようだ。
この判示を理解できる?
翻ってわが国の解雇法制は、労契法がうたう濫用法理を待つまでもなく、その前段階である「解雇予告」で厳しい洗礼を受ける。予告期間を置かず、予告手当も支払わない、労基法20条の趣旨をまったく逸脱した解雇が最高裁まで争われた基本的判例といわれる細谷服装事件(最二小判昭35・3・11)は、意外や会社側の勝利に終わっている。
事件のあらまし
Y社は、洋服の製造・修理を業とする会社である。
この会社に昭和24年3月以降雇われていたAは、一般庶務、帳簿記入などの業務に就いていた。ところが、4カ月ほど経過した8月4日、Y社はAに対し、突然、解雇通知を発出した。
その月の賃金を支払わないばかりか、労基法20条本文後段に基づき、使用者に対して支払いが義務付けられている解雇予告手当の支払いもなかった。
その後7カ月経過した翌年3月、AはY社に対し、…
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令和2年5月11日第3256号12面 掲載