【裁判例が語る安全衛生最新事情】第344回 ケー・アイ・エス事件① 短時間の投入作業に伴う腰痛に賠償 東京地裁平成28年6月15日判決
2020.05.12
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
被告Y1会社は業務用スパイスを製造販売する会社であり、原告Xは、平成13年10月に、その八千代工場で微生物検査や書類作成の業務に従事しており、平成20年以降は品質管理部門の主任の地位にあり、平成20年1月ごろからは、製造部門の作業員が昼休みを取っている間、1時間ほど同部門の殺菌工程の作業であるスパイス原料を殺菌機に投入する作業に従事していた。
Xは、平成20年7月25日に投入作業中に腰痛を発症したとし、平成23年1月21日から、腰痛が悪化して就労が困難であるとしてY1社を休職したが、Y1社は、1年経過後に退職扱いをした。Xは、平成24年5月に変形性腰痛症で就労不能という診断が出されていた。Xは、労災の休業補償給付の請求をし、平成25年10月に支給決定を受けた。
Xは、Xの腰痛は業務上災害であり、休職期間満了退職は労働基準法19条に違反しているとして雇用契約上の地位の確認とともに、Y1社に対して腰痛予防の対策を採らなかったことを理由として安全配慮義務違反または不法行為責任を問うとともに、平成20年当時に八千代工場の製造部門の管理課課長をしていた被告Y2に対しても、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、Xの作業の過重性
本件作業は、原料の入ったコンテナを…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2020年5月15日第2354号 掲載