【人事学望見】第1241回 中途採用者の内定取消し 退職届提出後で後戻りできない
新型コロナ禍に伴う景気後退は避けられそうにない。雇用の面で心配されるのは、新規学卒者の採用内定取消しだが、行政もしっかりバックアップしているから、かつての混乱はなさそう。心配なのは中途採用者で、即戦力をうたいながらあっさりご破算にするケースが怖い。
整理解雇に準じる厳しさ
月例給与60万円という好条件に飛び付き、会社に退職届を出して後戻りできない状態での採用内定取消しが争われたのはインフォミックス事件(東京地決平9・10・31)である。
事件のあらまし
大手コンピューター会社であるX社に在籍していたAは、Y社の役員、人事部長と面接し、マネージャーとして入社するようスカウトされ、採用内定の提示を受けた後、Yから採用条件提示書および入社承諾書の通知を受けた。提示書には、基本給60万円、入社希望日などが記載されていたことから、入社承諾書を送付した。Yからは通知書を受け取った旨の連絡があり、Aはこれを受けてX社に退職届を提出した。
ところが、入社予定日の直前にYの管理部門の責任者Bから、経営悪化を理由として内定取消しを通知された。入社をするのであれば、給与はそのままでマネージャーではなくSEとして働いてもらうと述べ、そのほか、(イ)基本給3カ月分の補償による入社辞退、(ロ)再就職を図るため試用期間中(3カ月)Yに在籍し、期間満了後に退職、とそれなりの対応を図っていた。しかしAはこれに応じず、内定取消しは違法として地位保全等の仮処分を裁判所に申請した。…
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