【裁判例が語る安全衛生最新事情】第346回 甲会社事件 石綿被害は訴外社が原因と請求棄却 大阪地裁平成30年3月29日判決
2020.06.10
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
原告Xは昭和58年4月から昭和62年まで被告Y会社に勤務した。Y社は、工業用ゴム製品などの販売の会社であり、その営業所では石綿製品として、ジョイントシート、ガスケット、パッキンおよびブレーキライニングを販売商品として取り扱っていた。Xは、Y社を退職後、1年2カ月間、A社の工場で勤務したが、そこでは鋳造用保温材などを製造しており、そこでXは成型品のバリ取りをしていた。A社の退社後、平成元年2月から平成24年3月までの間、住宅販売会社などの複数の勤務先で勤務した。
その後、Xは、平成23年11月に、胸部を受診したところ、「良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚」にり患しているとの診断を受け、労働基準監督署長に療養補償給付の請求をしたところ、給付決定がなされた。その調査の過程で労基署のB調査官は、Xの最終粉じんばく露事業場はY社の営業所であると判断して、業務上疾病に認定されたという経過があった。
Xは、前記疾病にり患したのはY社の安全配慮義務違反であるとして損害賠償請求訴訟を提起した。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2020年6月15日第2356号 掲載