【人事学望見】第1246回 身だしなみ基準と個人の権利 「常識の範囲」線引きが難しい!?
2020.06.18
【労働新聞】
髪型やひげ、服装は基本的には個人の自由に属する問題だが、顧客と直接接するような職種で、個人の自由が全面的にまかり通るわけではなかろう。会社の体面を汚すような事態が生じた場合とはいっても、その判断が顧客ならともかく、上司であるとひと悶着が起こる。
裁量権どこ 太刀打ちムリ
長髪・ひげを全面的に禁止したところ、会社のルールを無視したため、配転されたことから生じたトラブルが郵便事業(身だしなみ基準)事件(大阪高判平22・10・27)である。
事件のあらまし
Aは、ひげを伸ばし、長髪を後頭部で束ねる髪型で勤務をし、とくに注意を受けることはなかったが、平成17年に灘郵便局に配転されると、上司からひげを剃り、長髪を切るように繰り返し指導された。Aがこれに応じないでいたところ、平成18年4月以降、「特殊」業務の「夜勤」のみを命じられ、窓口業務に就けなくなった。
Aは、「ひげを生やす自由」および「髪を伸ばす自由」は憲法でも保障されており、会社の身だしなみ基準に違反していないこと、Aを特殊業務の夜勤勤務に就かせたことは人事権の濫用であること、職務調整額の支給を停止されたこと、管理者から執拗にひげを剃れ、髪を切れと責めたてられたことを主張し、精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求した。…
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令和2年6月22日第3262号12面 掲載