【新型コロナを乗り切る!産業保健と働き方改革】第1回 3つの方向へ多様化 法定支援では不十分 “緊急事態”が変化を加速/石澤 哲郎

2020.06.25 【労働新聞】
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健康リスクも増加へ

 ワーク・ライフ・バランスを重視する価値観の変化や、単身者や共働き夫婦の増加といった社会情勢に合わせ、ここ数年、主に3つの方向性に働き方の多様性(自由)が拡大してきた()。一つ目は「場所の自由」であり、在宅勤務やリモートワーク、サテライトオフィス勤務などがこれに当たる。二つ目は「時間の自由」であり、時差通勤やフレックスタイム制度、短時間勤務、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度などがある。そして三つ目は「契約の自由」、つまり副業や兼業、あるいは個人事業主として複数の企業にかかわる働き方である。いずれも労働者の多様化する就労ニーズに応えるだけではなく、企業の生産性向上や競争力強化、女性活躍推進などに資する可能性がある。

 一方で、多様な働き方が労働者の心身の健康に与える影響も無視できない。場所や時間の自由は、通勤の負担や職場の人間関係ストレスの軽減、育児や介護との両立といったメリットがある反面、不十分な労働時間管理による長時間労働問題や、職場内でのコミュニケーションの希薄化に伴うサポート機能(ラインケア)の低下を招き得る。たとえば、在宅勤務の普及に伴い、「在宅勤務うつ」と呼ばれるメンタルヘルス不調の問題が顕在化するなど、働き方や生活環境の変化がストレス負荷の一因になる可能性が懸念されている。

 他にも、時間の自由の最たるものである裁量労働制や高度プロフェッショナル制度は、労働時間規制の潜脱として悪用される可能性が危惧される。また契約の自由に伴う副業解禁は、複数企業での労務負荷によって長時間労働などに起因する健康問題を生じさせる危険性があり、労災問題が発生した際の責任主体の不明確化につながる可能性がある。

 この点、労働者の健康管理のあり方や複数の企業間での労働時間の通算などについて厚生労働省の検討会で議論されているが、未だ明確な結論は得られていない。さらに、ウーバーイーツなどのように個人事業主として企業と契約するようなケースでは、そもそも被雇用者を対象とした産業保健制度の支援が得られない点も指摘する必要がある。

 このように多様化する労働者の健康管理を支援するため、様ざまな施策が始まっている。たとえば、…

筆者:産業医事務所 セントラルメディカルサポート 代表 石澤 哲郎

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令和2年7月6日第3263号13面 掲載
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