【人事学望見】第1248回 育休取得と不利益取扱い 保護法なんのそのいじめに走る
賃金は、労働契約の重要な要素であり、労働者と使用者が合意して変更できるものの、経営不振や高年齢労働者の賃金抑制などを目的として、賃金の一方的引下げを行う事例があるが、判例ではこれを否定するものが圧倒的に多い。コロナ禍の下でもしかりである。
役割資格を外し年俸減給
電子応用機器関連会社の従業員が、育児休業後の降格、年俸の減給などを違法として争ったのがコナミデジタルエンタテインメント事件(東京高判平23・12・27)である。
事件のあらまし
ゲームソフトなどの製造販売を業とするY社において、ゲームに関する海外ライセンス業務に従事していたA子は、平成20年7月半ばから同21年4月までの間、産休および育休を取得した後に復職した。
A子は、育児短時間勤務を申し出て企画業務型裁量労働制の適用を外され、国内ライセンス業務に担務変更されたことにより役職グレードを「B―1」(Bクラス中最低)から「A―9」(Aクラス中2番目)に引き下げられ、これに伴って年俸額を減額された。
また、Yは、A子が産休までの3カ月間余みるべき成果を上げていないこと、産休のために繁忙期を経験していないことなどを理由に、平成20年度の成果報酬をゼロと査定し、年俸額を640万円から520万円に引き下げた。
これに対しA子は、一連の措置は、育休を取得した女性に対する差別であって憲法、労基法、育介法、雇用均等法に違反して無効であるとしてYに対し、給与差額、慰謝料等を求めて提訴した。…
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