【裁判例が語る安全衛生最新事情】第352回 (公財)後藤報恩会ほか事件② 地位の違い踏まえ違法な退職勧奨に 名古屋高裁平成30年9月13日判決
2020.09.10
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、Y1法人が設置運営する美術館に学芸員として勤務していたが、人事担当Y2、経理担当Y3、および、美術館長Y4からパワハラを受けて退職を求められたという事案である。Y2とY3は、Y1法人の前代表理事の実子であり、Y4は前代表理事の実弟である。
原告Xは、平成27年4月1日から本件美術館での勤務を開始した。Xは、平成27年11月20日に退職届を提出して退職した。
Xは、Y2、Y3、Y4らのパワハラ行為によって、急性気管支炎、咳喘息、心因性咳嗽にり患して退職を余儀なくされたと主張して、Y1~Y4に対して損害賠償請求訴訟を提起した。
前回(No.351)紹介した一審判決(名古屋地裁平成29年9月28日判決)は、Y2~Y4の面談時での発言をもって違法ではないと認定し、本採用時の辞令の交付がないことはY1法人の債務不履行であるとして、10万円(弁護士費用は別途1万円)の賠償責任を認めた。本件はその控訴審判決である。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2020年9月15日第2362号 掲載