【裁判例が語る安全衛生最新事情】第353回 居宅サービス会社事件 暴行の情報寄せられず回避義務なし 横浜地裁川崎支部平成30年11月22日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、訪問介護サービスなど介護保険法における居宅サービスの提供を行う被告Y1社に勤務。Y1社は緊急時に事業所への通報装置として居宅サービス利用客の自宅にテレビ電話端末を設置しており、Xの業務は、夜間に事業所に待機して、利用客から緊急通報があった際の電話対応を行うことであった。
被告Y2は、その事業所において、利用者宅を巡回し身体介護や生活支援を行う業務に従事した。
被告Y2は、定期巡回中に、利用者Aの自宅で通報装置がつながらなかったとの苦情を受けたので、通報装置のコンセントの接続を確認したところ、その機器には、Xが通報装置の操作方法が分からず右往左往している姿が映し出されていた。そして、Y2は事業所に戻って、Xに対して通報装置の操作方法を教えようとしたところ、Xはこれに反発し、本件トラブルの原因は、A宅の通報装置のコンセントをY2が確認しなかったことにあると発言をするにいたり、XとY2の仲は険悪となった。
そして、XとY2が事業所で2人だけになったときに、XがY2のミスを報告すると発言しそのため2人は口論となったが、その最中にY2がXのパソコンをのぞくと、Xが、Y2が通報装置の設置場所を知らない旨の文書を作成していることが分かったので、Y2がパソコンを取り上げようとした。そのとき、Xも手をひねり返したため、Y2はXを引っ張って倒して、その後馬乗りになって髪を掴むなどの暴行を行い、その結果、Xは後遺障害等級12級の傷害を負い、さらにY2は罰金10万円の略式命令が下された。
Xは、Y2に対して不法行為に基づき、使用者であるY1社に対する使用者責任に基づき、損害賠償請求訴訟を提起した。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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