【企業活力生み出す副業・兼業運用術】最終回 改定版ガイドラインに関する留意点 管理モデルが条件に 副業先へ導入を要請も/田村 裕一郎・井上 紗和子
原則の場合適宜申告を
前回、改定版「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、改定版)に関して、簡便な労働時間管理の方法である“管理モデル”を解説した。
管理モデルでは、副業先は常に割増賃金支払い義務を負うことになる。労働者Xの本業先Aにおける所定労働時間が8時間の場合、管理モデルを使用しなかったとしても(Aを欠勤した等の事情がない限り)副業先Bでの労働は時間外労働となることから、いずれにしてもBは1.25倍またはそれ以上の割増賃金を支払うこととなる。そのため、Aの所定労働時間が8時間または7時間45分などそれに近い時間のとき、管理モデルを用いることは、Bにとっても手続き上の負担が軽減されるというメリットがあろう。
したがって、Aの所定労働時間が比較的長い場合は、管理モデルを導入し、AとBは、他の使用者の事業場の実労働時間を日々把握する必要がなくなるという恩恵を受けるべきである。労政審(労働条件分科会)の議論(第161回)でも、高度な人材を想定しつつ、「恐らくはこのA社においてそれなりの長時間の労働もされた上で、さらに例えば週末などに副業をしていく場合などが主に念頭に置かれるのであろう」と説明している。
他方、Aの所定労働時間が比較的短時間である場合、管理モデルを導入すると、Bは、管理モデルを使わなければ割増賃金を支払う必要のなかった時間についても、これを支払うこととなりデメリットが大きい。このようなときには、これまでと同様に、AおよびBは、他方就業先の労働時間を、労働者からの申告等により、都度把握していく方法によるべきであろう(図)。同労政審の議論でも、パートの掛持ちのような、1日の労働時間が比較的短く、かつ所定外労働が頻繁に起きないケースについては、…
筆者:多湖・岩田・田村法律事務所 弁護士 田村 裕一郎・井上 紗和子
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