【社労士が教える労災認定の境界線】第317回 出張先で飲酒後に転倒して死亡
災害のあらまし
地方放送会社Cに勤務していた労働者Aは、同社従業員3人とともに1泊2日の予定で出張した。業務終了後、午後6~8時過ぎまで出張に同行した3人と飲酒を伴う夕食を取った。その後、宿泊施設内の階段を歩行している際に転倒して頭部を打撲するなどした。Aは、約4時間後にこのときの打撲などが原因で、急性硬膜外血腫で死亡。Aの妻であるBは労災給付をX労働基準監督署長に請求したが、Xは業務災害には該当しないとして労災給付の不支給決定をした。Bは決定を不服として、審査請求、再審査請求をしたがいずれも棄却された。このため、処分の決定の取り消しを求め訴えを提起した。
判断
第一審では、この転倒事故は、Aが出張先で、同僚との慰労や懇親を兼ねた趣旨で夕食とともに飲酒したものとして業務遂行性については肯定されたが、転倒の原因がAの飲酒による酩酊により発生したと判断され、業務起因性については否定され、この事件は業務災害には当たらないと判断した。Bは請求が棄却されたため控訴した。
第二審では、Aらの飲食行為は、宿泊を伴う出張において通常に随伴する行為であることについて全く否定することではなく、宿泊中の出張者が使用者に対して負う出張業務の全般についての責任を放棄したり逸脱したものとは認められないということで、この飲食行為について業務遂行性はあるものと判断した。これに伴う転倒事故について、…
執筆:一般社団法人SRアップ21 埼玉会
社会保険労務士行政書士楠原事務所 所長 楠原 正和
この記事の全文は、安全スタッフの定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら