【人事学望見】第1260回 銀行とサービス残業 就職人気凋落の要因となったか
本来、上司による時間外労働命令によって「残業」に就くはずだが、いかんせんその線引きは難しく、勝手に居残って割増賃金を稼ごうという輩もいる。自発的に残業するというのは一見「仕事熱心」にみえるが、職場管理上「業務命令」によることを徹底させたい。
早出・残業割増賃金なし
OA化の進行によって、銀行業につきものの「残業」体制はずいぶん改善された。これは古き良き時代の物語。京都銀行事件(大阪高判平13・6・28)がそれである。
事件のあらまし
Y銀行の就業規則では、始業が午前8時35分、終業時刻は、週初、週末および月末の各営業日は午後5時35分、それ以外の日が午後5時となっている。休憩時間は午前11時から午後2時までの間における「1時間」を業務に支障のないように交替で取得すると定められている。
実際には、男子行員のほとんどが8時過ぎまでに出勤して開店準備をするなどし、週2回、準備終了後8時30分から10分間の朝礼があった。そのほか男子行員には、事実上参加が義務付けられている「融得会議」が開催されることもあり、終業後の午後7時以降も多数の行員が業務に従事していることも珍しくなかった。
元従業員Aは、①始業時刻前の準備作業②朝礼③融得会議④昼の休憩時間⑤終業後の残業――について時間外勤務手当の支払いと同額の付加金の支払いを要求した。原審はいずれの請求も棄却したが、控訴審では、④をのぞき労働時間性が肯定され、始業時刻までの勤務、終業後の勤務については、黙示の指示による労働時間と評価した。…
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