【人事学望見】第1261回 万能でない調査協力義務 拒否する一般従業員には通じず
2020.10.15
【労働新聞】
使用者は、企業秩序の維持確保のために必要な規制を定めることができ、違反行為があった場合、懲戒処分を行うために労働者に対して事実関係の調査をすることがある。しかし、労働者は企業の一般的な支配に服していないので調査に常に従わなければならないわけではない。
職務内容に付随すれば可
富士重工業事件(最三小判昭52・12・13)は職場外政治活動に起因している。
事件のあらまし
Aは、自動車・鉄道車両などの製造を行うYの従業員。Aの同僚BおよびCが、就業時間中に上司に無断で職場を離脱し、就業中の他の従業員に対して、原水爆禁止運動資金調達のために販売するハンカチの作成を依頼したりしていた。
Yはハンカチを販売したりするなどの行為は、就業規則に違反するとして事実関係を調査することにし、関係の従業員から事実聴取を進めた結果、Bが関係していることが判明した。そこで、Yは、Bの就業規則違反の事実関係をさらに明確にする目的で、Aの事情聴取を行った。しかし、Aは当該事情聴取に対して、反問あるいは返答を拒否し、答えるように説得されてもほとんど応じなかった。
Yは、Aが調査に協力しなかったのは就業規則に違反し、懲戒事由に当たるとして、懲戒譴責処分に付した。Aは処分の無効を求めて争った。…
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令和2年10月19日第3277号12面 掲載