【裁判例が語る安全衛生最新事情】第355回 社会福祉法人藤倉学園事件 重度の知的障害でも平均賃金で認定 東京地裁平成31年3月22日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y法人は、障害者支援施設、障害児入所施設の経営を行う社会福祉法人である。Y法人は、キリスト教の精神に基づき、多様な福祉サービスがその利用者の意向を尊重して総合的に提供されるよう創意工夫することにより、利用者が、個人の尊厳を保持しつつ、心身ともに健やかに育成され、また、その有する能力に応じ自立した日常生活を地域社会において営むことができるよう支援することを目的として、障害者支援施設、障害児入所施設の経営を行っている。
亡Aは、自閉症で重度の知的障害者であった。平成14年から平成26年までに4回障害認定を受けたが、平成26年11月の認定は最重度の認定であった。原告X1、X2はその両親である。
X1、X2は、平成26年9月17日に、Y法人との間で、X1を保護者、利用児童を亡Aとする本件施設の利用契約を締結し、亡Aは、9月17日以降、福祉型障害児入所施設である本件施設に入所していた。ところが、平成27年9月4日に、本件施設の他の利用児童が帰園した際、玄関扉の電子錠が解錠されたままの状態であったために、亡Aは玄関から本件施設を出てしまい、行方不明となった。
約2カ月後の平成27年11月1日に、亡Aは山林で遺体で発見された。X1らは安全配慮義務違反または不法行為によりY法人に対して損害賠償請求訴訟を提起した。
Y法人も責任があることは争わず、問題は、知的障害者の逸失利益をどう捉えるかということであった。
Ⅱ 判決の要旨
1、逸失利益
(1)知的障害者の就労の可能性
法の定めが、知的障害者を含む障害者の一般企業への就労を…
執筆:弁護士 外井 浩志
この記事の全文は、安全スタッフの定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら