【裁判例が語る安全衛生最新事情】第356回 大島産業事件控訴審事件 事実上の代表によるパワハラを認定 福岡高裁平成31年3月26日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、長距離トラックの運転手である。被告Y1社はトラックの運送会社であり、被告Y2はその代表取締役である。なお、被告Y3はY2の夫である。
そのような状況下で、Y3からXに対しては、以下の①~⑤のような言動があった。
①Xは、平成25年6月30日に大分に配送した帰路に温泉に立ち寄ったために帰社が遅れた。それに立腹したY3は、Xの頭頂部および前髪を刈り、洗車用スポンジで頭部を洗髪し、最終的には丸刈りにした。
②Xは、同日、Y3が見守る中、他の従業員から下着姿にさせられたうえ、洗車用の高圧洗浄機で至近距離から噴射され、洗車用ブラシで身体を洗われた。
③さらに、平成25年9月16日、Y3は、Xに対し、下着1枚になって川に入るように命じ、他の従業員に対し、Xにロケット花火を発射するように命じて至近距離からXに向けて発射させた。Xは逃げ出したが、従業員らに石を投げさせた。
④平成25年10月上旬、Xは、会社から失踪した後に復職を認めてもらおうとY1社に戻った際、常務取締役に指示されて社屋入口前で、Y3が出社するまで土下座させられた。Y3が出社したが、土下座を止めさせることはなかったので、Xはその後も数時間土下座を続けた。
⑤その他、Y3のブログには、Xが半裸になって花火の発射を受けながら川の中に入っている姿の写真が8枚掲載されていた。また、土下座している写真も2枚掲載されていた。
Xは、未払賃金の請求の外、被告Y1社、Y2、Y3に対してパワーハラスメントと評価されるべき不法行為に基づく損害賠償などを請求した。一審判決(福岡地裁平成30年9月14日判決、=関連記事)は、Y3の事実上の代表取締役性を認めたうえで、Y3の行為はパワハラの違法行為であり、その責任はY1社に及ぶとした。賠償額は慰謝料として100万円(弁護士費用10万円は別途)を認定した。その他、Y1社に未払賃金として割増賃金約756万円、賃金の控除による未払賃金146万円の合計約902万円の支払い、付加金の支払いを命じた。名目上の代表取締役Y2に対する請求は棄却された。XおよびY1社、Y3らがそれぞれ控訴した。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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