【元監督官が明かす!!送検・監督のリスク管理 事例徹底分析】第6回 違法残業⑤~かとくの立件~ デジタル記録を復元 パソコン押収し証拠探す/西脇 巧
2020.11.05
【労働新聞】
多くの人員使い強制捜査を実施
厚生労働省では、長時間労働の削減を含めた過重労働対策の取組みを進めるため、2015年4月に東京労働局と大阪労働局に過重労働撲滅特別対策班(以下「かとく」)を設け(翌年には本省に設置)、違法残業に対する取締りを強化している。これまでに7企業を書類送検した(表1)。
表1 送検事例
年月日(場所) | 業態 | 送検事実 |
15年7月(東京) | 靴販売店 | 2店舗で従業員に違法な残業をさせたとして、法人、労務担当取締役および店長2人を送検 |
15年8月(大阪) | 外食チェーン | 17店舗で従業員に違法な残業をさせたとして、法人、エリアマネージャーおよび店長を送検 |
16年1月(東京) | ディスカウントストア | 5店舗で従業員に違法な残業をさせたとして、法人、支社長および店長を送検 |
16年9月(大阪) | 外食チェーン | 本社および4店舗で従業員に違法な残業をさせたとして、法人、部長および店長を送検 |
16年10月(大阪) | スーパーマーケット | 本社で従業員に違法な残業をさせたとして、法人、専務取締役および執行役員を送検 |
16年12月(東京) | 広告代理店(本社) | 本社で従業員に違法な残業をさせたとして、法人および幹部社員を送検 |
17年1月(東京) | 旅行会社 | 2事業拠点で従業員に違法な残業をさせたとして、法人および労務管理者を送検 |
17年4月(大阪、 京都、愛知) |
広告代理店(支社) | 3事業拠点で従業員に違法な残業をさせたとして、法人および幹部社員を送検 |
労働基準監督署(以下「労基署」)で取り扱う司法事件は、労働基準監督官(以下「労基官」)が単独で担当する例が多い。労働局の「かとく」は、一定の経験年数と知見を有する複数(当初は東京7人、大阪6人)の労基官から構成されている点に特色がある。私が、16年11月~17年4月に東京労働局の「かとく」に所属していた際も、非常に優秀で経験豊富な労基官が配置されていた。メンバーの協力と英知の結集がなければ、迅速かつ的確な捜査と送検はできなかったと思う。
「かとく」は、…
筆者:TMI総合法律事務所 弁護士 西脇 巧
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令和2年11月9日第3280号11面 掲載