【人事学望見】第1264回 業務命令有効か転籍出向 従業員の同意が原則的に必要!?
2020.11.05
【労働新聞】
転籍の場合、労働者の個別的同意を要するというのが原則である。ただし、採用の際に転籍について説明を受けたうえで明確に同意がなされ、人事体制に組み込まれて長年実質的に社内配転と異ならない状態になっている転籍については例外的に事前同意で認められることもある。
整理解雇の法理に照らす
具体的合意なしに行われた転籍命令が、無効とされた三和機材事件(東京地判平7・12・25)では、拒否を理由とする懲戒解雇も無効となった。
事件のあらまし
Yの倒産に伴い、和議手続下で会社再建のため、Yの営業部を独立させて新会社を設立。Aらを含むYの営業部の全従業員に新会社への出向を命じた(本件転籍出向命令)。
しかし、Aのみがこれを拒否したため、Yは就業規則に基づきAを懲戒解雇したところ、Aは転籍出向命令は無効であり、懲戒解雇も無効として、労働契約上の地位確認および賃金の支払いを請求した。
Yは、会社と新会社とは実質的に同一会社で、出向者にとっては給付すべき義務の内容および賃金等の労働条件に差異はなく、転籍となっても何の不利益もないため、転籍出向命令については配転と同じ法理により、会社の持つ包括的人事権に基づいて、従業員の同意なしに命じることができる、また、新会社設立の3カ月前に、Yにおいて従来から存した就業規則上の出向規定に転籍出向を含む改訂を行った、などとして争った。…
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令和2年11月9日第3280号12面 掲載