【人事学望見】第1266回 高年齢層への不利益取扱い 若年・中堅層再配分で合理性が
組合員の労働条件を不利益に変更する労働協約も、そのことを理由として直ちに効力を否定されるわけではない。特定の労働者、一部の組合員をことさらに不利益に取り扱うことなど、労組の目的を逸脱して締結されたものでない限り、有効とされている。
労基法3条に違反しない
高齢職員には耳の痛い話だが、日本固有の年功序列型賃金制度には、処遇と貢献度との間に乖離があると、働き盛りの社員から否定的な声も上がっている。日本鋼管(賃金減額)事件(横浜地判平12・7・17)はその問題について、労使が納得して労働協約化した賃金改定は「年齢差別」との声が組合員から挙がった。
事件のあらまし
Y社では、「定年延長と従業員管理制度の改定」について労使で妥結し、調印実施されていた。60歳定年制が確立した翌年、Y社は、X組合に対し、社員、役職、賃金、社外派遣など従業員に関する各種制度の改定案を内容とする従業員管理諸制度の改定案を提案したところ、X組合の中央委員会では、会社提案を一部修正した内容で「協定を締結」する旨が全会一致で決定された。
この決定に基づき、賃金制度に関する協定書の締結となった。その内容は、①基本給については、本給における考課昇給制度の廃止・60歳までの一貫昇給制度への改定②仕事給の見直しおよび業績・能力の適正な処遇の観点から、各項目の見直しがなされた。
その結果、新モデル賃金は、54歳までは旧制度よりも高くなるものの、55歳以降は、逆に旧制度よりも低くなった。
Aらは、右協定により不利益を受ける(55歳以上の組合員の賃金が3万円減額されることなど)とし、①旧制度に基づく賃金を受ける地位にあることの確認②協定は法令に違反し不合理であり無効として差額賃金の支払いを請求した。…
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