労働判例

 経営法曹会議に所属する気鋭の弁護士が、職場に役立つ最新労働判例を分かりやすく解説。事件の事実関係、判決のポイント、会社側が留意すべき事項を指摘し、労使トラブルへの対応や人事労務管理への応用を紹介します。

 1992年からの記事を掲載しており、ジャンルやキーワードによる検索も可能です。タイトル末尾に「★」マークがあるものは、判決文のリンクを掲載しています。

2023.06.29 【判決日:2022.12.02】
桜美林学園事件(東京地判令4・12・2) 専任教員のみ手当支給され均衡欠くと賠償請求 扶養手当なし不合理でない
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  • 労基法の基本原則
  • 同一労働同一賃金

 非常勤教員らが専任教員との間に扶養手当や住宅手当、期末手当に関し不合理な待遇差があるとして損害賠償を求めた。東京地裁は、扶養、住宅手当を生活保障および福利厚生の趣旨で支給するものと認定したうえで、職務内容や兼職禁止に相違があると指摘。継続勤務が想定されるとの原告主張を考慮しても、不合理でないとした。賞与が持つ性質も大きな差異があるとした……[続きを読む]

2023.06.22 【判決日:2022.11.16】
不動技研工業事件(長崎地判令4・11・16) 同業他社への引抜き計画に関与した3人を懲戒 服務規律違反の解雇は無効
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  • 懲戒・懲戒解雇
  • 競業避止義務

 競合会社を立ち上げる元従業員の引抜き計画に加担したのは職務専念義務に反するとして、懲戒処分を受けた3人が処分無効を訴えた。長崎地裁は、懲戒解雇や降格処分等を無効とした。服務規律違反には改善を求めると定めているが指導等していなかった。部下らへ転職を働きかけたとも認められない。会社が処分内容等を社内や取引先へ公表、説明したことは名誉毀損に。……[続きを読む]

2023.06.15 【判決日:2022.09.14】
日本通運(川崎)事件(東京高判令4・9・14) 有期雇用は上限5年まで、雇止め有効の一審は 不更新条項への合意認める
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  • 更新拒否(雇止め)
  • 解雇

 1年間の有期雇用契約を締結し、明示していた5年の上限に達したため雇止めした事案。地位確認請求を退けた一審と同様に、東京高裁も不更新条項は有効であり、更新の合理的期待を否定。元従業員は上限条項の説明を受け十分認識しており、自由意思に基づかず合意したとはいい難いとした。無期転換権や雇止め法理を定めた労契法の適用を回避、潜脱するとはいえない。……[続きを読む]

2023.06.08 【判決日:2022.06.23】
関西新幹線サービック事件(大阪地判令4・6・23) コロナ禍に有給の自宅待機認められず慰謝料!? 出勤命令は裁量権の範囲内
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  • 労働契約上の権利義務
  • 損害賠償

 コロナ禍で有給の自宅待機とされた日を出勤日に変更された従業員が、感染の危機にさらされたとして慰謝料等を求めた。大阪地裁は、一定のルールに基づき待機の日を割り当てたことに裁量権の逸脱濫用は認められないと判断。労働者に待機を求める権利はなく、出勤指示は重い負担や不利益を課すものでないとした。臨時に出勤を命じることがあると組合と協定していた。……[続きを読む]

2023.06.01 【判決日:2022.06.29】
インテリム事件(東京高判令4・6・29) 固定残業代含む年俸額減額、本人同意は不要? 年俸決定権限の濫用で無効
ジャンル:
  • 割増賃金
  • 就業規則
  • 賃金
  • 賃金・賞与

 在職中、3度にわたり年俸を減額された元従業員が、同意がなくても固定残業代の減額は有効とした一審を不服として控訴した。一審は職務給の減額のみ無効としていた。東京高裁は、年俸決定権限の濫用に当たり違法と判断。評価、査定の運用は合理性や透明性を欠き、公正性に乏しいとしている。残業時間が少ないなどの理由で固定残業代を自由に減額できないとした。……[続きを読む]

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